桜木町駅をランドマークタワー方向へ向かう時、注意していないと見落としてしまいますが、「東横浜駅について」「ここに駅があった」という2つの小さな碑文があります。
「東横浜駅」の碑文
今から35年前、桜木町駅からランドマークタワーに向かう一帯は夥しい数の線路だったということを知っている人は、どんなに若くても確実に40代後半以上の方に限られるでしょう。
1872(明治5)年に日本に鉄道が開通したということは、社会の時間で必ず学ぶと思いますが、桜木町駅は日本に鉄道が初めて開通した時の横浜駅です。その後横浜駅が現在の位置に移ると、それまでの横浜駅は旅客専用の桜木町駅と、貨物だけを扱う東横浜駅に分かれました。
私は、ギリギリで東横浜駅があった時代を知っています。
あんなに沢山線路があった場所が、後にランドマークタワーやコレットマーレのような華やかな建物が並ぶなんてとても想像がつきませんでした。
横浜市民の生活を支えていた東横浜駅でしたが、残念ながら私が見た東横浜駅は度重なる国鉄の運賃・料金値上げや貨物列車が宅配便の台頭で競争力を失って全盛期はとっくに過ぎ、廃止される前後の姿でした。
横浜というと刑事ドラマなどでは倉庫街が出てきますが、倉庫街につきものなのは線路です。
廃止される前後の東横浜駅は貨車の数も少なく線路だけが目立って、しかも海はすぐ近く、「いかにも横浜」という姿を醸し出していました。
東横浜駅の他に、横浜・桜木町周辺には貨物を扱う駅が点在していましたが、前述した貨物列車の不振でこれらの駅の貨物扱いは東横浜駅から直線距離で10km弱の横浜羽沢駅に移転・統合されました。
日本の鉄道の開通は、日本の歴史でも一大エポックと言える出来事ですが、東横浜駅の碑文は鉄道の開通が日本の歴史にとって重要な位置を占めていたということばかりでなく、その後の日本の物流構造や社会情勢の変化などを後世に伝える意味でも貴重な碑文であると言えます。
鉄道に興味がある方にとっては勿論、歴史全般に興味がある方、運輸史を研究している方にもお勧めするスポットです。